アップルとAmazonは消費者独占企業にはならない
2016/04/29
スポンサーリンク
Apple
現在割安になっている銘柄の一つにアップル(AAPL)があります。
言うまでもなくiPhoneを製造販売している企業でとてつもない利益とブランド力を持っています。
EPS(一株当たり利益)は10年で0.32ドルから9.22ドルへと急激に成長しており財務状況も超良好、フリーキャッシュフローも莫大と文句なしです。
そのアップルが現在は予想株価収益率(PER)10.2倍と売り込まれています。
これをチャンスと捉える方も多いのではないかと思います。
Amazon
また、強烈な成長をしている企業の代名詞のような存在として語られる事が多い企業にAmazon(AMZN)があります。
こちらも言わずもがな通販の最大手です。
利益こそ出ていませんが、これはビジネスの拡大に資本を多く割いているからです。そのため売上高は10年で10倍にまで膨れ上がっています。
AmazonはAppleと違い超割高ですが成長性に注目してこちらも投資家に人気の銘柄です。
どちらも超長期投資には全く向かない
強固なビジネスを有するこの二企業ですが、じゃぁこの二つの企業に投資してバイ&ホールドしとけば儲かるか?というと私は決して儲かるとは思いません。
「え?強固なビジネスを持っている企業に投資するのがバフェットもやっている投資じゃないんか?」と思われると思います。
確かにこれらの企業はビジネスモデルも優れていて利益率も高くなる、もしくは高くなる見込みがあります。
しかしそれでも私はあえてこれらの企業は長期投資には向いていないと思います。
この二つの企業に共通するビジネスモデルの短所があります。
ビジネスモデルにおける短所の共通点
Amazonの場合
共通する短所、それは「消費者に不便を強いることで利益を得ようとしている」点にあります。
Amazonについてはご存知の方も多いかと思います。
例えばつい最近では送料無料で顧客を引き込んでいたのに突如プライム会員(有料会員)限定で送料無料に変更しました。
また英Amazonではプライム会員限定商品を設定までし始めました。
ポチった商品を1時間以内に配達してくれるサービス「Prime Now」など年会費3900円のAmazonプライム会員が使える独自サービスを拡充する一方で、事前告知一切なしでプライム会員以外の送料無料を突如終了して多くの消費者を驚かせたのがAmazonです。そんなAmazonのイギリス法人である「Amazon.co.uk」が、一部の人気商品をプライム会員限定で販売し始めました。しかし、複数メディアがこのことを報じたからか、限定販売を取り消したり復活させたりを繰り返しているようです。
Amazon.co.ukは「Assassin’s Creed Syndicate」「Grand Theft Auto V(GTA V)」「FIFA 16」などのPS4向け人気ゲームタイトルをプライム会員限定で販売する、というあまりに大胆な策に打って出ました。
人気ゲームタイトルの一部がプライム会員でないと買えなくなってしまったのは2016年4月22日の朝からで、PS4向けタイトルでは「Assassin’s Creed Syndicate」「GTA V」「Rainbow Six Siege」がプライム会員限定販売となり、「FIFA 16」「Far Cry Primal」「Battlefield Hardline」などのゲームタイトルはPS4とXbox Oneの両方でプライム会員限定販売に変更されました。
ゲームソフトの人気タイトルなどは発売直後は品薄で消費者は探し回ることが多いです。
もしその品薄な時期にアマゾンが巨大な倉庫に買い占めてしまえば消費者はAmazonからしか買うことができなくなります。
この独占禁止法スレスレのビジネスモデルは当然高い利益率を生み出すことができるでしょう。
アップルの場合
一方アップルはどうでしょうか?
アップルの強みは何といってもiPhone顧客の囲い込みです。
実は私の彼女がiPhoneを愛用しているのですが以前「何故iPhoneを使い続けるの?」と問いかけたことがあります。
答えは単純な二つのものでした。
一つは「周りの皆が使っているから」もう一つは「慣れているから」でした。
特に「周りのみんなが使っているから」はなんとも女性らしい解答なのですが、問題はもう一つの「慣れているから」です。
iPhoneはアンドロイドと比べて操作性が若干違います。
シンプルと言えば聞こえはいいですが実際はアップルの都合の良いように様々な利便性を捨てています。
特にサポート面は劣悪で、何故かiTunesというアップルの楽曲販売ツールを通じてしかバックアップを取ることができなかったり音楽を入れることができなかったりします。
これは全てを関連付けることで収益のチャンスを広げているものだと思われます。
こういった囲い込みは収益を安定させるメリットがある一方で顧客から選択肢を奪い取っていることになります。
客に好んで選ばれて初めて消費者独占企業になる
バフェットがよく口にする「ビジネスの堀」いわゆる「消費者独占企業」はいずれも「消費者を喜ばせて自社を選ばせる」ことで消費者を独占しています。
例えば消費者独占企業の代表であるコカ・コーラは客に美味しいコーラを提供することで結果的に客が好んで選ぶようになりました。
例えば消費者独占企業の代表格であるビジネスのクレジットカードビジネスならば、どこの国やどこの店でも使えるように、またポイントが付く分顧客がお得に買い物できるように努力することで顧客に利便性を提供して「結果的に」クレジットカードへの依存度を高めて高い利益率を獲得しています。
また手前味噌で申し訳ありませんが、私の保有銘柄であるIBMならば第一に顧客のビジネスを考えることで高い信頼を築いてきました。
旧CEOであるルイス・ガースナー氏の時代に行ったビジネス転換としてこのような話があります。
当時のIT企業は如何に自社に顧客を囲い込むかに心血を注いでいたのですが、ルイス・ガースナー氏は全く別の観点でIBMを立て直しました。
それは顧客を第一に考え自社以外の企業の製品も紹介してみたのです。つまり他社と足を引っ張り合い顧客を囲い込もうとするんじゃなく他社と協力して顧客をサポートしようとしたのです。
超短期的に見れば自社だけのサービスではなくなるので収益は悪化しますが、長期的には顧客はIBMを信頼しより良い結果を求めて更にIBMを頼るようになりました。
![]() |
そうです、まさに現在のアップルとAmazonはビジネスモデルは違えど考えとしては過去のIBMと同じ轍を踏んでいるのです。
両社がこの「顧客に不便を強いること」で利益を挙げようとすることに血眼になり続ける限り本当の意味での「消費者独占企業」にはなり得ないのです。
ですのでこれらの企業を「消費者独占企業だ!」と言って長期投資してしまうのはちょっと痛いかもしれません。
「顧客を捕まえる」のと「顧客が集まってくる」のは似ているようで全く別物なのです。